目が見えないアメリカ人女性
全盲の女性がツアーにいました。
もう10年くらい前のことで、どこの市からどこの町からきたか、記憶があいまいなのだけど、アメリカの議員さんたちが、日本のどこかの市と姉妹都市制定◯年、ということで、視察もかねて、夫婦で日本に来たのでした。
記憶もかなり薄れているんですが、成田空港迎えのシーンは、はっきり覚えています。
全盲の方がいるなんて全く事前情報がなく、私には全くの予想外。
「ハロー」と現れた1人は見るからに全盲でした。
私はめちゃくちゃ焦りました。
全盲の人を見て焦るなんて、ほんとダメダメガイドです。
実は、初めての全盲の人のガイド。しかも前情報なし。
とにかく半パニック。
「どうしよう?」
そればかりが頭を駆け巡った気がします。
エージェントにも電話して泣きつきました。
「全盲のゲストなんて聞いてない」と。
今思うと恥ずかしい限り。
私は、勝手にものすごいプレッシャーを感じていました。
特別な扱いなんて相手は期待してないのに。
二日目は、富士山と大涌谷。
私は、考えた末、バスガイドとしていつもと少しだけ違うガイディングをしてみました。
「右手に見えている白い中規模のスタジアムはサッカーのスタジアムです。」
普段『白い中規模の』のなんて修飾語はいれません。
私が特別にしたことはただそれだけ。
後はなにもしませんでした。
というか何をしていいか分からなかった、という方が正しかったかな。
全盲の彼女は、市議会議員のご主人様の配偶者としてこの旅行に参加。
アメリカという国は、
欧米といったほうがいいか?
配偶者と一緒(男性同士もあります。)に参加する旅行が多いです。
大涌谷へ着きました。
この時は、散策路が開いていました。
今は火山活動で閉鎖されています。
散策路は、硫黄の匂いが強く、臭覚であきらかに違いは感じたせいか、とても喜んでいました。
この彼女、なんでも喜んでくれて、感動してくれて、よく笑います。
一言でいうと無邪気!
話していると、全盲ってこと忘れてしまいます。
でも聞いてみたら、生まれた時から目は見えなかった、と。
どうしたらこんなに純粋で、無邪気な人間になるのでしょう?
秋でススキがとてもきれいでした。
たまたまご主人様と全盲の奥様が私の横にきたので、すすきに触ってもらいました。
すすきのフワフワとした感覚にはしゃぎ、見せる無邪気な笑顔。
今でも忘れられません。
いつもご主人様と一緒にいたので、私の出番はほとんどなかったのですが、一か所だけ私の活躍の場所。
それはトイレです。
身障者トイレがあればご主人様と一緒に入れます。
しかし、10年前の大涌谷、身障者トイレがありませんでした。
しかも、洋式ではなく、和式トイレ!!
こ、こ、これはハードルが高すぎる。
全盲でなくても和式トイレは難しいのです。
外国人、身体が固いから、うんちんぐすたいる?っていうんでしょうか?
これが出来ない人が多いんです。
和式トイレ大丈夫かな?
でも、次のトイレ休憩まだ先だし。
そこで、和式トイレを説明し、「どうする?」って聞いてみました。
「ジャパニーズトイレ!チャレンジしてみたい!」と。
チャレンジ??
そんな大それたものでもないけど・・・まぁいいか。
トイレの前でうんちんぐすたいるの練習をする私と女性。
「穴があるからね。そこでこうやってね。」と説明。
彼女は最初から笑っています。私は真剣。
でも、私もとうとう真剣の糸が切れ、大笑い。
大笑いしながら練習終了。
そして無事本番も終了。
「どうだった?」と聞いたら
「臭かったわ~」って。
そうそう、和式は洋式より臭う!
と言うのを忘れていました。
とにかく明るい、よく笑う。前向きでユーモアにあふれている。
だからこそ、素敵なご主人様に出会い、家族を築き、幸せをつかんでいる彼女。
彼女から見習うことは山ほどありました。
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